彼女は、誰だったのか。その嘘さえも愛おしい映画『市子』
あらすじ・ストーリー
3年間同棲した恋人・長谷川(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日、川辺市子(杉咲花)は忽然と姿を消した。
途方に暮れる長谷川のもとに、市子を捜しているという刑事が訪れる。そこで長谷川は、彼女の顔写真とは全く違う名前と年齢が存在すること、そして彼女が法的には「存在しない人物」であることを知らされる。
彼女はなぜ逃げたのか? なぜ名前を偽る必要があったのか?
彼女の行方を追う中で、関係者たちの証言から浮かび上がってくるのは、壮絶な家庭環境と、生き抜くために彼女が積み重ねてきた悲痛な嘘の数々だった。すべての謎が繋がった時、胸を締め付ける真実が明らかになる。
主要キャスト
- 川辺市子 役杉咲花
- 長谷川義則 役若葉竜也
- 北見冬子 役森永悠希
- 吉田キキ 役中田青渚
- 刑事・後藤 役宇野祥平
底知れない深淵。鑑賞レビュー
【感想1】杉咲花の凄みに言葉を失う。魂を削るような126分
★★★★★ (5.0)「杉咲花が凄い」とは聞いていましたが、想像を遥かに超えていました。ただそこに立っているだけで、市子が抱える孤独、狂気、そして微かな希望までもが痛いほど伝わってきます。特に長回しのシーンでの目の演技は、もはや演技とは思えないほどのリアリティでした。
決して明るい映画ではありません。観終わった後もしばらく立ち上がれないほどの重さがありますが、それでも「観てよかった」と心から思える傑作です。彼女が選んだ生き方を、誰も裁くことはできないと感じました。
【感想2】社会の闇に埋もれた「透明人間」たちの叫び
★★★★☆ (4.5)無戸籍問題やヤングケアラーなど、現代社会が見て見ぬふりをしている問題を鋭く突きつけてくる作品です。ミステリーとしての構成も秀逸で、過去と現在を行き来しながら徐々に市子の輪郭がはっきりしていく過程には、スリルと同時にやるせなさが募ります。
恋人役の若葉竜也さんの自然体な演技が、市子の特異さをより際立たせていました。ラストシーンの解釈は人によって分かれると思いますが、私はそこに彼女なりの「救い」と「決意」を感じました。

